✔ 学習ポイント
認知再構成法は、認知行動療法の枠組みで不適応的な自動思考を適応的な思考へ変容させる治療法です。
思考記録表を用い、状況や気分、思考を可視化した上で、根拠と反証に基づき客観的に思考を検証・修正します。
セラピストは協働経験主義に基づき、導かれた発見を通じて、患者自らが柔軟な思考を獲得し感情を改善できるよう支援します。
認知再構成法とは何か、簡単に説明してください。
認知再構成法とは、個人のネガティブ感情を増大させる思考や信念を変容(再構成)する治療法のことです。
協働経験主義に則り、患者はセラピストと協力しながら、不適応的な自動思考に気づき、適応的な思考をもてるようになることを目指します。認知再構成法は基本的にどのような流れで行われますか。
自動思考を同定したあと、その自動思考が過度に悲観的・非機能的になっていないか検証します。
自動思考と矛盾する出来事や客観的事実を探し、視点を変えて物事を考えることで、ネガティブな感情がどう変化するかを検証します。思考記録表に書き込む行為により、患者は認知再構成の治療の効果を得られますか。
思考記録表に書き込む行為自体は、認知再構成による治療に直結しません。そのため、思考記録表を埋めることを目標としないように注意しなければいけません。
思考記録表はあくまでも、認知再構成を行う上で、思考の流れを可視化するための手段です。
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認知再構成法とは
認知再構成法とは、個人のネガティブ感情を増大させる思考や信念を変容(再構成)する治療法のことで、認知行動療法の枠組みのなかで行われます。
認知再構成法では、不適応的な自動思考に気づき、適応的な思考をもてるようになることを目指します。不適応的な自動思考について、「そのように考える根拠は何か」と患者はセラピストと共に検討していきます。

認知再構成の技法としては、思考記録表(コラム法)がよく知られています。思考記録表とは、その名の通り、不適応的な思考から適応的な思考への変化を記録するツールです。思考記録表を利用することで、患者は思考の変化を可視化でき、認知再構成を行いやすくなります。
とはいえ、思考記録表以外にもさまざまな方法があり、患者との対話はもちろん、行動的技法を通して行うこともあります。
協働経験主義と導かれた発見
認知行動療法では協働経験主義を重視しているため、認知再構成法においても、適応的な思考をセラピストが一方的に教えるということはありません。セラピストは、患者自身が自分で気づけるような形で質問をするなど、患者が自分自身の経験を通じて答えにたどり着けるように支援します。
このようにセラピストは、ソクラテス式対話による「導かれた発見(guided discovery)」をベースとして、生活や感情状態の改善に繋がるパターンを患者が自ら発見することをサポートします。
認知再構成の基本的な流れ
認知再構成は「自動思考の同定」から「自動思考の検証・修正」という、大きくわけて2つのステップで行われます。

自動思考の同定
認知再構成のステップでは、初めに自動思考の同定を行います。
自動思考とは、意図せず自動的に頭に浮かぶ思考や心的イメージのことを指します(ポジティブ・ネガティブ問わず)。
自動思考は、日常的な場面で生じては消えていく瞬間的な思考のため、普段意識されることは少ないです。言い換えれば、自動思考が感情にネガティブな影響を与えるとしても、それに気づくのは難しいということになります。
認知と感情は深く結びついており、自動思考を明らかにすることで感情をコントロールしやすくしたり、感情の変化を捉えることで自動思考に気づくためのきっかけとしたりすることが可能です。
患者がどのような自動思考を持っているのかを知ることで、感情をコントロールするために何が必要かを考えることができるようになります。
自動思考の検証・修正
自動思考が明らかになった次のステップでは、その自動思考が過度に悲観的、非機能的になっていないかを検証します。そして、その思考について、別の考え方ができないか、また、別の考え方をしたときに感情がどう変化するのかを検証していきます。
この作業を通して患者は、適応的な考え方や感情のコントロールの仕方を学んでいくことができます。
思考記録表(コラム法)とは
思考記録表(コラム法)とは、思考と感情の関係に気づくための自己モニタリングおよび認知変容のために利用されるツールの1つです。
思考記録表には、不快な感情が生じたときの状況や気分、自動思考、適応的な思考などを書き込んでいきます。思考や感情の流れを可視化し、認知再構成に取り組みやすくすることが狙いです。
そのため、思考記録表はあくまでも、認知再構成を行うための補助ツールといった位置づけとなります。思考記録表を埋めること自体が治療に直結しているわけではない点に注意が必要です。

さて、患者は思考記録表を下記の内容で書き進めていきます。表にあるそれぞれの列(コラム)を埋めていくことで、状況の評価から問題解決まで、順を追って整理できます。
思考記録表のコラム
- 状況:状況を書き出す。
- 気分:そのときの気分を書き、0~100で評価する。
- 自動思考:そのとき頭に浮かんでいた考えを書き出す。
- 根拠:自動思考を裏づける根拠、証拠となる事実を探す。
- 反証:自動思考や根拠と矛盾する事実を探す。
- 適応的思考:根拠と反証にもとづき、最も適切で論理的な考え方をつくる。
- 今の気分:適応的思考をした場合の気分を再評価する。

また、思考記録表を用いた認知再構成法は「自動思考に気づく」「情報収集に基づく自動思考の検証」「適応的思考の案出」の3つのステップに分けることができます。
自動思考に気づく
「自動思考に気づく」ためのステップでは「状況」「気分」「自動思考」のコラムを利用します。
状況と気分が明らかになった状態で、どのような考えが浮かんでいたのかを思い出すことで自動思考に気づくきっかけを与えます。
情報収集に基づく自動思考の検証
「情報収集に基づく自動思考の検証」をするステップでは「根拠」「反証」のコラムを利用します。
自動思考の根拠となる客観的事実を探すことで、患者は自分が持っていた自動思考の妥当性を考え直すことになります。
適応的思考の案出
「適応的思考の案出」をするステップでは「適応的思考」「今の気分」のコラムを利用します。
自動思考とは別の視点から状況を捉え、柔軟な思考で考え直します。そして、柔軟に考え直したことで、気分にどのような変化があるかを自覚します。
柔軟な思考で気分が少しでもポジティブに変化したのであれば、別の視点から柔軟に考えること、もとい、認知再構成の重要性を患者が認識できるようになります。
思考記録表を用いた認知再構成の具体的な流れ
最後に、思考記録表の各コラムを記入する際の具体的な流れを確認しておきましょう。
状況を具体化する
「状況」のコラムでは、状況の具体化を行うために、不快な感情が生じたときの状況(特定の時間:one slice of time)を話し合うことが基本です。この際、情景がありありと浮かぶくらい具体的にすることが重要です。状況の具体化が、後のステップで自動思考を同定する際に役立つためです。
セラピストは「いつ」「どこで」「誰が」「何をしていた(何が起こった)」「なぜ」「どのように」の5W1Hを把握できるような質問をします。例えば、「最近つらいことがあった」と発言した患者に対して、「つらい気持ちになったのは、どこで、誰と、何をしているときだったのですか」と質問をします。

気分(感情)を同定する
不快な感情が生じたときの状況を具体化したら、次はその時に感じていた気分(感情)を同定します。複数の気分があっても問題なく、むしろ、感じていた気分をすべて取り上げることが望ましいです。
セラピストは「そのときどんな気分でしたか」と質問をし、「不安」「悲しい」「怒り」など、患者が感じていた気分を明らかにします。
気分は一語で表現できるようなものですが、思考と気分を混同する患者もいるため、区別するためのコツを教えることも適宜必要です。
思考は、文章やセリフになっていることが多いです。例えば患者には、「私は迷惑な存在だ」は気分ではなく思考である、などと伝えるとよいでしょう。
気分が同定できたあとは、その気分の強度の評定に移ります。その気分があるかないか、の二択ではなく、気分の程度として捉えます。セラピストは「悲しみを0~100%で表すとどれくらいになりますか」といった質問をします。
ここで明らかになった気分の程度が、以降のステップを通じてどう変化するか、患者に理解してもらうことが認知再構成の効果を得るために大切です。

自動思考を同定する
状況と気分が明らかになったら、自動思考を同定するステップに入ります。複数の自動思考があげられてもよいですが、ここで重要なのは、そのときの気分に最も強く結びついた思考(ホットな思考)を同定することです。
セラピストは基本的に「そのときどんなことが頭に浮かんでいましたか」や「他にも考えていた事はありませんか」などと質問をします。また、ホットな思考を同定するためには「そのときの気持ちに一番大きく関係していた考えはどれですか」などと質問をします。
ホットな自動思考に気づくには、質問だけでなく、患者の喋り方や声の様子、話す速度、表情などの情報も参考になります。こういった事柄に変化が見られたときは、強い感情が動いているサインだと考えられるためです。
自動思考を同定する際の留意点はいくつかあるので、まとめて確認しておきましょう。
- 1つだけでなく、他にも自動思考がないかを考える。
- 否定的認知の3徴「自己・他者・未来」に焦点を当てて自動思考を確認する。
- 疑問文を避ける(疑問文を検証することは難しいため、言い切りの形で記入)。
- 自動思考はイメージや記憶のこともある。

自動思考の根拠を同定する
自動思考が同定できたら、次は自動思考を裏付ける客観的な証拠を見つけます。このとき、患者の主観ではなく、客観的事実に基づくことが重要です。「きっと〇〇だから」や「〇〇に違いない」といった、勝手な思い込みや事実の解釈は避ける必要があります。
例えば、特定の状況の末「私は上司にとって手のかかる迷惑の存在だ」という自動思考が同定された場合、そう考えた根拠を探します。「私は仕事の内容がわからなかった(客観的事実)。そして、わからないところを聞いた時、上司はぶっきらぼうな口調(客観的事実)だった」といったように、解釈を含まない事実を見つけます。

自動思考に対する反証を同定する
次に、自動思考が妥当ではないことを示す客観的証拠を探します。セラピストは、患者が見えていない事実に目を向けられるようにさまざまな工夫を凝らす必要があります。
視点を変えるためには、第三者の立場で考えさせたり、過去の似たような経験を思い出させたり、自分の状態(健康状態や年齢など)が違うときにどう思うかを考えさせたりします。また、冷静になって自動思考と少しでも矛盾する出来事や事実がなかったかを尋ねることも重要です。
例えば「上司は忙しいとき、ぶっきらぼうな口調で話しがち」という事実が反証にあたります。

適応的思考を導き出す
自動思考の根拠と反証をもとに、自動思考が現実であるかどうかを検証し、自動思考に代わる柔軟な考えを見つけます。このとき、根拠と反証を繋いだ文章を作成することで、適応的な思考が見つけやすいです。
例えば「上司はぶっきらぼうな口調だった(自動思考の根拠)。しかし、上司は忙しいときにぶっきらぼうな口調で話しがちだ(自動思考の反証)」と、根拠と反証を繋げてみます。すると、「私が手のかかる迷惑な存在」のためにぶっきらぼうな口調だったのではなく、「上司はそのとき忙しかったから、誰にでもぶっきらぼうな口調だった」というような適応的思考に変化させることができます。
ただし、全てのケースで適応的な思考が見つかるわけではありません。もし、自動思考が妥当で現実に即している場合は、認知の修正を試みるのではなく、現実的な問題に対して問題解決を検討することが必要です。

気分の変化を確認する
適応的思考を導き出しあとは、最初に比べて気分がどのように変化したかを考えます。「気分(感情)を同定する」で明らかにした気分の程度と比較して、良い方向への変化があった場合、認知の修正が有効であったと言えます。
患者はこれらの認知再構成の作業を通じて、気分の改善を図ることができ、また、認知を客観的に捉え直すことの意味を理解することができるようになります。

以上、思考記録表による認知再構成の流れの解説でした。
また、認知再構成の流れの部分は、日本認知療法・認知行動療法学会の認知行動療法の共通基盤マニュアルを参考にしております。
問題
認知再構成法とは何か、簡単に説明してください。
認知再構成法とは、個人のネガティブ感情を増大させる思考や信念を変容(再構成)する治療法のことです。
協働経験主義に則り、患者はセラピストと協力しながら、不適応的な自動思考に気づき、適応的な思考をもてるようになることを目指します。認知再構成法は基本的にどのような流れで行われますか。
自動思考を同定したあと、その自動思考が過度に悲観的・非機能的になっていないか検証します。
自動思考と矛盾する出来事や客観的事実を探し、視点を変えて物事を考えることで、ネガティブな感情がどう変化するかを検証します。思考記録表に書き込む行為により、患者は認知再構成の治療の効果を得られますか。
思考記録表に書き込む行為自体は、認知再構成による治療に直結しません。そのため、思考記録表を埋めることを目標としないように注意しなければいけません。
思考記録表はあくまでも、認知再構成を行う上で、思考の流れを可視化するための手段です。
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