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心理統計学とは?統計学との違いと、できること

✔ 学習ポイント

心理統計学は、心理学の分野で仮説を統計的に検証するための学問です。
この学問は、データの特徴を要約する記述統計学と、データから集団全体(母集団)の特徴を推測する推測統計学の両方を用いて、目に見えない「心」の客観的・科学的な分析を可能にします。これにより、個人の主観を超えた根拠のある結論を導き出します。

  1. 記述統計学とは、どのような目的で使われる学問ですか。

    記述統計学は、得られたデータの特徴を要約し、全体像を把握することを目的としています。
    例えば、「昨年1年間の降水日数が〇〇日」というのは記述統計学にあたります。この場合、1年間という集団全体(母集団)のデータを対象として、雨が降った日数を要約しているためです。

  2. 推測統計学とは、どのような目的で使われる学問ですか。記述統計学との違いに触れながら説明してください。

    推測統計学は、一部のデータから集団全体(母集団)の特徴を推測することを目的としています。
    例として、「天気予報における降水確率」が挙げられます。手元にあるデータの要約に留まる記述統計学とは異なり、推測統計学はデータからまだ見ていない全体を予測しようとする点に違いがあります。

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心理統計学とは

心理統計学は統計学の一分野であり、あらかじめ立てた仮説を統計学的な手法を用いて検証することを目的としています。

心理統計学では一般的な統計手法に比べて、因子分析構造方程式モデリングなど、複雑な分析手法を用いられることが多いです。「心」という目に見えない概念の分析に特化しているため、通常の統計学に加えて必要な知識も多くなってきます。

その第一歩として、まずは通常の統計学がどのようなものかを知るところから始めてみましょう。

統計学とは?「記述統計学」と「推測統計学」

統計学とは、得られたデータの特徴を要約したり、データが属する集団全体(母集団)の特徴を推測することを目的とした学問です。

統計学が用いられる分野は多岐にわたり、心理学や医学などの学問分野はもちろん、メディアやマーケティングといった、ビジネスの場面でも頻繁に活用されています。統計学の考え方や方法論を1つ学習するだけで、様々な範囲に応用が効く、非常に有用な学問だと言えるでしょう。

さて、統計学には大きく分けて2つの種類が存在します。得られたデータの特徴を要約する「記述統計学」と、集団から一部のデータ(標本)を収集し、そのデータから集団全体(母集団)の特徴を推測する「推測統計学」です。

では、その2つはそれぞれどのような場面で用いられているのでしょうか。

「統計学とは?「記述統計学」と「推測統計学」」の解説・学習補助画像

身近な統計

「統計」という言葉だけを聞くと少し身構えてしまいそうですが、案外、統計学は身近に使われているものです。日常的に触れていることが、実は統計学だった、なんてことも珍しくありません。

日常的なものを挙げるとすると、天気予報における「降水確率」も統計学が利用されている代表的な例ですね。

降水確率は、過去の膨大な気象データから、特定の条件での天候を予測して算出されています。簡単に言えば「【気温:28℃、気圧配置:低気圧】というデータが100日分あり、そのうち30回は雨が降った。今日もそのデータと似たような気温と気圧配置である。であれば、今日雨が降る確率は30%ほどだろう」といった推測がされています。

収集したデータから特定の条件のときの降水確率を予報する、というのは立派な推測統計学に当てはまりますね。

では次に、「昨年1年間で雨が降ったのは100日でした」という報道がされた場合、これは記述統計学、または、推測統計学のどちらかに当てはまるものでしょうか。

この報道は得られたデータの特徴を要約した記述統計学であると言えます。なぜなら1年間は、365日分のデータで構成された集団とみなすことができ、「雨が降ったのは100日」と、全体の特徴を要約しているからです。記述統計学の定義にばっちり当てはまっていますよね。

降水確率の他にも、テレビの視聴率や、国勢調査、世論調査、選挙の出口調査など、統計学が使われている例を挙げればキリがありません。このように、統計学というのは案外身近なところに存在しているのです。

記述統計学と推測統計学は、別の記事で詳しく解説していますので、気になる方はそちらをご覧ください(「記述統計学」と「推測統計学」)。

心理学と統計学の関係

では、心理学と統計学にはどのような関係があるのでしょうか。

「客観的データを用いた科学的なアプローチ」で心を研究するのが心理学ですが、統計学との関係を説明する前に、心の研究における「科学」の歴史について少し振り返ってみましょう。

心理学における科学

まず、心の研究は「哲学」から始まっています。しかし、哲学では客観性があまり重視されず、主観的な考えが示されることが多いと言えます。そのため、哲学は心を研究する科学的な学問にはなり得ませんでした。

次に、心理学の創設者であるヴントは「内観法」によって、客観的データの収集を試みました。内観法とは、統制された環境下で自らの意識内容を観察し、報告する方法のことです。ヴントは、第三者による内観法から得られたデータは科学的な分析に利用できる、と考えていました(心理学の誕生とヴントの要素主義)。しかし、本当にそう言えるでしょうか。

実は、現代では内観法で得られたデータの客観性は疑わしいと言わざるを得ません。

確かに、第三者からの報告という点では客観的データと言えるかも知れません。しかし、問題なのはそのデータの信頼性です。内観法は第三者が報告した結果の根拠を何も示すことができませんでした。

データの根拠を示すには?

当然ながら、第三者からの報告を科学的な研究に利用する場合、そのデータには根拠が求められます。

「それは分かっているけど、その人が言ったことが本当か分からないから困っているのでは……?」と思った方がいれば、それはもっともな疑問です。

例えば、痛みを10段階で答えてもらう実験の回答でAさんが「8」と答えたとします。この痛みは10段階中の「8」である、と言ってもそれはAさんの個人的な回答に過ぎないでしょう。

しかし、その実験を複数人に行い、Bさんが「9」、Cさんが「7」、Dさんが「8」……というようにAさん以外の回答を集めた場合はどうでしょうか。集計の結果、平均値が「8」になったため、この痛みは10段階中の「8」である、と言えば、それは個人的な回答ではなくなるのです。

「痛みは10段階中の8」という結論は同じですが、多数のデータに裏付けられているという点で、全く異なるものだと分かっていただけると思います。

つまり、十分な数を集計すれば個人の回答であっても、客観的・科学的なデータにできる、というのが「統計学」なのです。

「データの根拠を示すには?」の解説・学習補助画像

現代の心理学の研究では、多くの被験者の回答を収集し、統計的な処理を行うことによって「目に見えない心」を解き明かそうと試みています。とは言っても、心理学における全ての研究に統計学が関連するわけではありません。例えば、記述式のアンケートやインタビューによる研究は、単純に統計的な分析ができるものではないためです。

しかし、今日の心理学において根拠のあるデータと結果を示すために、心理学と統計学は切っても切り離せない存在であることは確かです。

心理統計学でできること

心理統計学の目的は、あらかじめ立てられた仮説を、収集したデータを用いて統計的に検証することです。

「心」は目に見えない存在だからこそ、統計学を用いて客観的かつ科学的に捉えていく必要があります。

例えばAさんという人物がいて、今までの経験から「女性は男性に比べて友好的である」という考えを持っていたとしましょう。数十年の人生のなかで感じていることで、Aさんにとっては確信的な事実です。

しかし、これを客観的な視点から見ると、単なる1個人の感想にしか過ぎません。「女性は男性に比べて友好的である」という考えを検証したわけではないからです。

心理統計学では、次のようなアプローチを経ることで、Aさんの考えを根拠のあるものにすることが可能です。

心理統計学での仮説検証

  1. 「友好的」を定義
  2. 性別や年齢など、特徴に偏りなく集団を抽出
  3. 「友好度合い」を測定
  4. 男女ごとの「友好度合い」の平均値を比較(t検定など)
  5. 結果に差があれば、仮説は支持される

これらは、議論の中心となる概念を定義し、それを議論の対象となる集団で測定し、結果を比較するプロセスと言えます。この流れは統計学を利用する心理学の調査や実験において、非常に基本的な方法です。

ただ、1つ重要な点があります。統計学で仮説の検証をする場合、「結果に差があっても、仮説が直ちに立証されるわけではない」ことを覚えておいてください。「統計的に差がある」というのは、あくまでも確率上はその仮説が正しい可能性が高い、ということを意味します。

というのも例えば、「日本では女性の方が友好的という結果が出たけど、海外では男性のほうが友好的だった」という結果が出る場合が考えられるためです。この場合、友好度に影響を与えるのは「文化差」である可能性が出てきます。

このように、そもそもの分類方法が誤っている可能性も考えられるため、仮説を立証するためには、様々な面から問題を捉えていく必要があるのです。

統計学を学び、適切で妥当な研究デザイン、データの収集方法、仮説検証を実行できるスキルを一緒に身に着けていきましょう。

問題

  1. 記述統計学とは、どのような目的で使われる学問ですか。

    記述統計学は、得られたデータの特徴を要約し、全体像を把握することを目的としています。
    例えば、「昨年1年間の降水日数が〇〇日」というのは記述統計学にあたります。この場合、1年間という集団全体(母集団)のデータを対象として、雨が降った日数を要約しているためです。

  2. 推測統計学とは、どのような目的で使われる学問ですか。記述統計学との違いに触れながら説明してください。

    推測統計学は、一部のデータから集団全体(母集団)の特徴を推測することを目的としています。
    例として、「天気予報における降水確率」が挙げられます。手元にあるデータの要約に留まる記述統計学とは異なり、推測統計学はデータからまだ見ていない全体を予測しようとする点に違いがあります。

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統計法

#初学者向け#統計基礎

記事:下町直輝

更新日:2025-08-09

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  • 記述統計学

    分析対象となった集団で個別にデータを観測し、得られたデータを要約すること。

  • 推測統計学

    手元のデータ(標本)の情報をもとに、その背後にあるより一般化された集団(母集団)の性質を推測によって導き出すこと。

  • 母集団

    調査したい集団の全体。

  • 標本

    母集団を推測するために用いる集団の一部。分析対象となった集団から実際に得られたデータ。

  • 内観法

    統制された環境下で直接経験(自らの意識内容)を観察し、報告する方法。訓練された観察者が行い、同じ条件での観察が安定して行われる必要がある。