✔ 学習ポイント
心理学は、古代ギリシャのソクラテスによる「心の内なる世界」への問いから始まりました。心は哲学として扱われ、プシュケーや心身二元論が議論されます。デカルトの理性主義や生得主義、ロックの経験主義(タブラ・ラサ)といった思想は、対立しながらも現代心理学の多様な分野の礎となっています。
デカルトの「心身二元論」とはどのような考え方? また、心身二元論の「心」は、古代ギリシャの「プシュケー」という言葉とどのように関連する?
心身二元論は、心(意識)と身体(物質)は異なる実体とする考え。デカルトの「心」は、プシュケーの「魂」「精神」の概念を受け継ぎ、「意識的思考を行う非物質的な実体」と定義し直したもの。
デカルトが提唱した「生得主義」とはどのような考え方? また、これは「理性主義」とどのように関係する?
生得主義は、人間には理性や基本的な観念が生まれつき備わっているという考え方。理性主義は、この生まれつき備わった知識(生得観念)をどう理性で獲得するかに焦点を当てます。
知識の起源に関する「理性主義」と「経験主義」は、それぞれどのような考え方? また、現代心理学にどう影響している?
理性主義は知識を理性で得るとし、経験主義は経験のみで得るとします。理性主義は認知心理学、経験主義は学習心理学などに影響を与え、両者とも心理学の礎となっています。
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哲学と心理学の関係
心理学が誕生する以前、人々は心についてどのように考えていたのでしょうか。人間の心についての学問的な関心の歴史は長く、その始まりは古代ギリシャの時代まで遡ります。
「世界はどうなっているのか、と考えるあなたはあなた自身について何を知っていますか。人間は何を知っているのですか」
紀元前5世紀ごろ、哲学者ソクラテスが人々に投げかけた質問です。当時、人々の関心は外の世界、つまり「世界やその構造がどうなっているか」という部分にありました。しかし、ソクラテスに言わせれば、人々は世界のことどころか、自分自身のことについてさえ何も知らないのです。そこで、ソクラテスは思考の対象を人間の内なる世界、つまり、心へと移していきました。
このようなきっかけから、心理学が1つの学問として独立する19世紀頃まで、心の問題は主に哲学として扱われてきました。哲学は、心理学に比べてより主観的、かつ、非科学的な部分が多いと言えるでしょう。しかし、概念的かつ体系的に心についての考えが示されてきたため、心理学の思想的なルーツにも繋がっています。
今回はそんな哲学についてのお話です。
心と魂
ソクラテスやプラトンは心を魂(プシュケー)と呼び、物質とは違う、神秘的で特別なものだと考えました。これは、「魂は肉体が滅びても消滅することなく、不滅である」とした輪廻転生論が特徴です。
そこからプラトンは「魂は生まれる前から真の善や美を知っている」と主張しました。人は「魂」を持っているため、初めて見たものでも「美しい」や「善い」などの判断ができるのだと考えたのです。魂が覚えていたものを見ることによって「美しい」と思い出すため、これは「想起」と呼ばれています。そして、この考えは、人間は生まれつき「観念(意識の中にある事物)」を持っているとするデカルトの「生得主義」に影響を与えていきます。
ちなみに、魂(心)に関する最も古い心理学的著述はアリストテレスの「霊魂論」です。
心身二元論
心と身体のありかたの違いを示したのが、17世紀の哲学者デカルトの心身二元論です。デカルトは、心は精神的なものであり、物体や身体のような物質ではないと主張しました。身体は、物質によって構成された物理的対象であり、物理的法則に従って機能します。しかし心は、物理的対象ではなく、物理的法則に従って機能するものではありません。
また、身体と心はそれぞれ実体(それだけで存在しうるもの)と考えていたため、身体がなくても心は存在できると考えていました。もちろん現在では、心は身体(脳)を離れては存在できないとされています。ただ、この心と身体に関する相互作用はデカルト問題と呼ばれ、後世への影響は大きいものでした。
生得主義・理性主義

デカルトは、人間には理性や基本的な観念が生まれつき備わっていると考えました。人間は白紙の状態で生まれてくるのではなく、ある観念(善悪の区別や数値、完全の概念など)を持って生まれてくると主張したのです。このような、経験によることのない先天的な理性や観念を「生得観念」といいます。そして、人には生得観念がある、と主張する考え方が「生得主義」と呼ばれています。
また、デカルトはある生得観念が正しいかどうかは「理性」によって直ちに判断されると考えていました。世界の価値や意味、秩序は「理性」が生得観念を利用することで理解できるとし、この考え方は後に「理性主義」と呼ばれるようになります。
経験主義
17世紀の哲学者ロックは、全ての知識や観念は経験によって得られると考えました。人間の心は「空白の石版(タブラ・ラサ)」のようなものであり、知識や観念は全て五感から得た経験によるものだという主張です。これは前述の生得主義とは対立した考え方と言えるでしょう。
理性主義と経験主義の対立
理性主義と経験主義は対立した考え方ではあるものの、どちらも心理学の礎石としての役割を果たしてきました。例えば、学習心理学の学習理論では経験主義の影響が大きい一方で、認知心理学の情報処理モデルや幼児の言語習得理論などは理性主義の立場に近いといえます。そのため、これらの主義はどちらが正しい、間違っているという単純なものではないことに注意が必要です。
これらは単なる一例に過ぎませんが、哲学と心理学の関わりについて少しでも理解していただけたならば嬉しいかぎりです。哲学も興味深い学問だと思いますので、少しでも興味を持たれた方は「ソクラテスの弁明」など、比較的読みやすい書籍から手を出してみてはいかがでしょうか。
問題
デカルトの「心身二元論」とはどのような考え方? また、心身二元論の「心」は、古代ギリシャの「プシュケー」という言葉とどのように関連する?
心身二元論は、心(意識)と身体(物質)は異なる実体とする考え。デカルトの「心」は、プシュケーの「魂」「精神」の概念を受け継ぎ、「意識的思考を行う非物質的な実体」と定義し直したもの。
デカルトが提唱した「生得主義」とはどのような考え方? また、これは「理性主義」とどのように関係する?
生得主義は、人間には理性や基本的な観念が生まれつき備わっているという考え方。理性主義は、この生まれつき備わった知識(生得観念)をどう理性で獲得するかに焦点を当てます。
知識の起源に関する「理性主義」と「経験主義」は、それぞれどのような考え方? また、現代心理学にどう影響している?
理性主義は知識を理性で得るとし、経験主義は経験のみで得るとします。理性主義は認知心理学、経験主義は学習心理学などに影響を与え、両者とも心理学の礎となっています。
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