✔ 学習ポイント
1879年、ヴントはライプツィヒ大学に初の心理学実験室を開設し、「意識」を直接経験の科学として創始しました。
ヴントは意識を純粋感覚と単純感情に分解し、それらが結合して統覚となる要素主義を提唱。データ収集には内観法を用いました。弟子ティチェナーが継承するも、内観法の客観性への疑問から、後の心理学はヴントへの批判を起点に発展しました。
「科学としての心理学」が誕生したとされる年と、その出来事としてヴントが何をしたか、具体的に説明してください。
1879年に、ヴントがドイツのライプツィヒ大学に世界初の心理学実験室を創設したことが、「科学としての心理学」の誕生とされています。
ヴントが提唱した「要素主義」とはどのような考え方ですか。
要素主義とは、意識を「純粋感覚」や「単純感情」といった基本的な要素に分解して理解しようとする考え方です。
その目標は、1. 意識内容を心的要素に分析、2. これらの要素の結合の方式を見出す、3. その結合法則を決定することです。ヴントの要素主義における「純粋感覚」と「単純感情」と「統覚」とは何か説明してください。
純粋感覚は対象の客観的属性(例:赤、丸い)、単純感情は主観的な快不快(例:美味しそう)といった意識の最小単位。
これらが結合し、一つの対象として認識される過程が統覚です。ヴントが意識内容のデータを収集するために用いた「内観法」とはどのような方法ですか。また、その客観性について現代の視点から簡単に評価してください。
内観法とは、統制された環境下で自らの意識内容を分析的に観察し、報告する方法です。
現代ではその客観性は疑問視されますが、心理学を科学として独立させる初期の試みとしては重要な意味がありました。
クリック/タップで表示(記事末尾にも設置)
1879年:ヴントが心理学を創始
哲学や精神物理学から独立した「科学としての心理学」はドイツの生理学者であるヴントにより創始されました。
心理学は学問の中で比較的新しい位置づけにあり、その誕生は1879年だと言われています。これは、ヴントがライプツィヒ大学に世界で初めての心理学実験室(現在で言うところのゼミ・研究室)を創設した年が由来です。
さて、19世紀の「心」の研究で特徴的だったのが、生理学や物理学などの自然科学の研究手法が取り入れられていた点です。ウェーバーやフェヒナーによる精神物理学がその代表例であり、「心」の研究へ数学的な基礎を与えたと言えるでしょう。
しかし、あくまでもウェーバーは生理学者、フェヒナーは物理学者であり、「心」の研究を独立した1つの学問として扱おうとはしませんでした。そのような背景のなかで「心」を1つ学問として研究しようとした人物、それがヴントだったのです。
直接経験の科学
ヴントは心理学を直接経験の科学として捉えています。直接経験とは、経験する主体も含めた経験、つまり「意識」のことです。刺激を与えられた被験者が何を感じているのか、という感情や意識の部分にも焦点を当てたのが特徴的だと言えますね。これは主観的な要素を排除して物理現象を取り扱う、間接経験の学問(生理学や精神物理学など)とは根本的に異なる画期的なアプローチでした。
ヴントは、この直接経験を、厳密な実験と内観法(体系的な自己観察)を用いて分析することで、心理学を真に独立した科学へと押し上げたのです。
要素主義と構成心理学
ヴントが目指した心理学は「要素主義」や「構成心理学(構成主義)」と呼ばれており、その特徴は「意識」を要素に分解して理解しようとした点にあります。
要素主義の目標
- 意識内容を感覚、心像(イメージ)、感情などの心的要素に分析
- これらの要素の結合の方式を見出す
- その結合法則を決定する
上記の手続きに従えば、複雑な意識現象であっても、単純な心的要素に分析されたあと、再結合されることでその構造を探ることが可能だと考えたのです。
ヴントによれば、意識は「純粋感覚」と「単純感情」に分解可能で、それらが結合した「統覚」として対象を意識ができる、とされました。そして、これらのデータを収集するためにヴントが提唱したのが、被験者に意識内容を報告してもらう「内観法」でした。
純粋感覚と単純感情から形成される統覚
突然ですが、あなたの目の前に「りんご」が置かれたと想像してみてください。そして、そのりんごについて感じたことをいくつ挙げられるでしょうか。「りんごだとしか思わないよ」という方もいるかも知れませんが、重要なのはじっくりと観察することです(想像の中ではありますが……)。

さて、あなたは、1. りんごの形に注目して「丸いな」、2. 記憶の中のイメージと照らし合わせて「こんなにも赤かったかな」、3. 小腹が空いた気がして「美味しそう」、4. 食べたときの食感を想像して「硬そう」と、感想を抱いたとしましょう。
このとき、「1. 丸いな」「2. 赤いな」にあたる要素が純粋感覚と呼ばれ、対象が持っている「明るさ」や「色調」、「形状」など、客観的な属性を直接感じ取ったものです。また、「3. 美味しそう」「4. 硬そう」にあたる要素が単純感情と呼ばれ、対象への「快・不快」や「緊張・緩和」、「興奮・鎮静」などの感情が含まれます(感情の3次元説)。
そして、純粋感覚と単純感情が結合し、複雑な意識過程が形成された結果が「統覚」です。「丸い+赤い+美味しそう+硬そう」という小さな情報の組み合わせにより、りんごという1つの対象が認識されるのです。わかりやすく言うと、「水素」と「酸素」という要素が結合した結果、「水」ができるようなイメージですね。

このような「要素の組み合わせによって、1つの対象が知覚できる」という考え方が「要素主義」と呼ばれる理由です。
ちなみに、統覚には2つの意味があり、「心的内容を明瞭に意識する」という意味と、「多数の心的内容を統一する」という意味があります。
内観法
次に、純粋感覚と単純感情に関するデータの収集方法としてヴントが提唱した「内観法」を見ていきましょう。
内観法とは、統制された環境下で自らの意識内容を観察し、報告する方法のことです。報告者は、対象を見たとき全体を知覚するのではなく、対象の各部分を分析的に知覚して報告することが求められます。先ほどのりんごの例では、「りんごだ!」というのが全体的な知覚で、「丸い、赤い、美味しそう、硬そう」といった要素が分析的な知覚に当たります。
日常生活において、このような細かな観察を意識的に行うことはないかも知れません。しかし、こういった分析的な知覚の訓練を積むことで、その報告は第三者からの客観的なデータとして利用できるとヴントは考えたのです。
現代においては、内観法の客観性は疑わしいです。しかし、客観的なデータを取り扱う学問として、心理学を哲学から独立させる試みとしては重要な意味を持っていたと言えるでしょう。
構成主義とティチナー
ヴントの心理学は、その弟子であったティチナーに引き継がれていきます。
ティチナーは意識を構成する要素として「心像(イメージ)」を重視し、純粋感覚と単純感情と心像の3種類を明確化しました。他にも、触覚の構造の分析を行ったり、感情をヴントの3次元説ではなく、「快・不快」の次元のみとして構成心理学の体系を簡潔化したりしています。
ティチナーはアメリカのコーネル大学で構成主義の伝道者として活躍したものの、その考えを引き継いだ人はほとんどおらず、大きなムーブメントにはなりませんでした。
19世紀以降の心理学
ヴント以降の心理学は、ヴントへの批判によって発展していくことになります。ヴントの心理学は、意識を分析対象として考えていましたが、意識は実体がなく、外部から観察することができないためです。
ヴントもティチナーも、内観法を用いて意識のデータを収集していたため、客観的・科学的に適切と言えるのか、という点で疑問が残ってしまうのでした。とは言え、「客観的データから心を分析する」という心理学の基礎を作ったという点で、その貢献はとても大きいと言えます。
問題
「科学としての心理学」が誕生したとされる年と、その出来事としてヴントが何をしたか、具体的に説明してください。
1879年に、ヴントがドイツのライプツィヒ大学に世界初の心理学実験室を創設したことが、「科学としての心理学」の誕生とされています。
ヴントが提唱した「要素主義」とはどのような考え方ですか。
要素主義とは、意識を「純粋感覚」や「単純感情」といった基本的な要素に分解して理解しようとする考え方です。
その目標は、1. 意識内容を心的要素に分析、2. これらの要素の結合の方式を見出す、3. その結合法則を決定することです。ヴントの要素主義における「純粋感覚」と「単純感情」と「統覚」とは何か説明してください。
純粋感覚は対象の客観的属性(例:赤、丸い)、単純感情は主観的な快不快(例:美味しそう)といった意識の最小単位。
これらが結合し、一つの対象として認識される過程が統覚です。ヴントが意識内容のデータを収集するために用いた「内観法」とはどのような方法ですか。また、その客観性について現代の視点から簡単に評価してください。
内観法とは、統制された環境下で自らの意識内容を分析的に観察し、報告する方法です。
現代ではその客観性は疑問視されますが、心理学を科学として独立させる初期の試みとしては重要な意味がありました。
クリック/タップで解答表示
記事をお気に入りに追加






