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精神分析とは?フロイトの「局所論」と「構造論」

✔ 学習ポイント

精神分析は、抑圧された心的なものを意識化することです。
フロイトは、神経症治療から無意識の重要性を見出し、精神的な現象には原因があるとする心的決定論を提唱しました。さらに、心の構造を「意識・前意識・無意識」に分ける局所論、そして「イド・エゴ・スーパーエゴ」に分ける構造論を考案しています。

  1. 精神分析とはなにか、簡単に説明してください。

    精神分析とは、S.フロイトによって創始された、無意識に抑圧された心的なものを意識化するアプローチです。
    無意識の中に抑圧された心的外傷体験(過去の不快な記憶など)が適切に処理されないことからヒステリーが生じると考え、それを意識化することで治療を試みました。

  2. 局所論とは、どのようなものですか。

    局所論は、心を「意識」「前意識」「無意識」の3層に分ける初期の心の構造論です。
    意識は自覚できる領域、前意識は思い出そうとすれば意識できる領域、無意識は意識できないが行動や感情に大きく影響する領域で、外傷体験などが抑圧されると考えられました。

  3. 構造論とは、どのようなものですか。

    構造論は、心を「イド(エス)」「エゴ(自我)」「スーパーエゴ(超自我)」の3つの構造に分けるフロイトの後期の理論です。
    イドは無意識の領域で快楽原則に従う本能的衝動、エゴは現実原則に基づきイドと超自我を調整する自我、スーパーエゴは道徳原則を司る内面化された社会規範を表します。

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S.フロイトと精神分析

精神分析は19世紀の後半にジークムント・フロイト(Freud,S.)によって創始されました。

精神分析とは「抑圧された心的なものを意識化すること」を指し、今日に至るまで心理臨床の理論や実践に大きな影響を与え続けています。
医師であったフロイトは、生物・心理・社会モデルでいうところの「生物」モデルで人を診ることをスタートしたといえます。しかし、「生物」モデルだけでは説明のつかない、器質的に異常のない人々が麻痺や健忘などといった神経症を示す現実がありました。神経症の人々に対する臨床経験や研修を重ねるなかで、フロイトは無意識の重要性を感じ始めます。

そんな時にフロイトは、無意識についての研究を深めるきっかけとなったヒステリー患者、アンナ・Oの症例に出会いました。

アンナ・Oの症例と無意識、抑圧

アンナはフロイトの友人、ブロイヤーによって催眠治療が行われていたヒステリーの患者です。

アンナの主訴、つまり、抱えていた症状は「水が飲めない」ということでした。そして、この主訴は、アンナが「犬がコップの水を飲んでいた」ことを目撃し、嫌悪の感情を抱いたということを話したことによって解消されます。ブロイヤーはアンナに催眠をかけ、心の奥に隠されていた問題の原因を表面化させたのです。

このような症例や、自身の経験からフロイトは、無意識の中に抑圧された心的外傷体験(過去の不快な記憶など)が適切に処理されないことがヒステリーの原因だと考えるようになりました。

ちなみに、その後にフロイトは無意識を探り、抑圧された記憶を処理する方法として自由連想法を開発しています。

精神分析の理論化

どうしてヒステリーが生じるのか、そしてどのようなアプローチが有用であるのかということが見えてきました。ここから次のステップに進むためには、精神分析の理論化が必要でした。つまり、これまでの知見を体系化し、実践の根拠となる考えをまとめる作業です。

こうしてフロイトは、こころに関する、現代にまで語り継がれる壮大な精神分析の理論を考案していきます。それでは、その精神分析の理論たち「心的決定論」「局所論」「構造論」について順にみていきましょう。

心的決定論

心的決定論とは、精神的な現象も偶然ではなく原因(動機)があって生じると考えるものだという考えです。

例えば、ヒステリーが生じるのは「幼いころに性的な外傷体験があり、それを無意識に抑圧している」ためだと考えます。つまり、失錯行為や夢、あるいは神経症が起きるのには何か原因があり、その結果生じているとする因果関係を見出したのです。

フロイトは精神分析を行うなかで、問題行動の原因を自由連想法により発見し、意識化することで治療しようと試みました。この辺りは医師らしい発想といえますね。さらにフロイトは、「無意識」があるというこころの在り方を「見える化」していくことになります。

局所論

「無意識」なるものがこころにはある、と、つきとめたフロイトですが、今度は「無意識」なるものがあるこころとは、どのような形をしているのかということを理論化する必要に迫られます。

そして、その結果生み出されたのが局所論と呼ばれる心の構造が考案されました。この局所論では心を3層に分けて考えます。まずは初期の「意識、前意識、無意識」について見ていきます。

「局所論」の解説・学習補助画像

意識

自分自身で経験し、コントロールできる層です。記憶や感情、思考や認知など、心の現象として経験できる領域が当てはまります。例えば、リンゴを見て「赤い」や「美味しそう」と感じられるのは意識の領域に当てはまります。

前意識

忘れているだけで意識しようと思えば意識できる層です。

例えば、「リンゴ」という漢字を思い出してみてください。普段あまり漢字で書くことはないかと思いますが、正しく思い出せるでしょうか?ヒントは「リン檎」です。どうでしょうか。自力で思い出せた人も、ヒントを見て「あー!」となった人も、前意識が働いた結果なのです。ちなみに答えは「林檎」でした。

無意識

意識することができない層で、日常の行動の多くが無意識によって決定されています。

ここまで画面をスクロールしながら読み進められてきたかと思います。しかし、その時に画面をスクロールする指の動きは特に意識していなかったはずです。これこそ無意識の働きで、人は日常の多くのことに無意識の影響を受けているのです。これは動作だけではなく、「感情」にも同じことが言えます。

フロイトは、人はこの「無意識」に、思い出したくない過去の外傷体験を抑圧すると考えました。そして、それこそが神経症の原因であると考え、自由連想法などによる意識化での治療を試みたのです。

構造論

局所論を生み出したフロイトは、その後継となる第二の局所論、構造論を生み出していくことになります。この構造論でもフロイトはこころを「イド、エゴ、スーパーエゴ」の3領域に分けて考えました。

「構造論」の解説・学習補助画像

イド(エス)

局所論でいうところの無意識に相当します。

不快なことは避け、快を求める「快楽原則」に則り、現実を無視し、直ちに欲求を実現しようとする衝動を持ちます。後述する「エゴ(自我)」や「スーパーエゴ(超自我)」にリビドーという性的欲望に由来するエネルギーを供給する役割を持っているとされます。

ところで、なぜイド(エス)という2つの名前を表記されているのか気になった方もいるかもしれません。

実はこのイド(エス)というのは英語でいうit(それ)に相当する言葉で、元来フロイトは母語の独語「Es」と表現していましたが、英語文献への翻訳に際し、ラテン語由来の「Id」とも表記されるようになり一般的な呼称となっていったのです。

エゴ(自我)

イド(エス)は快楽原則に従った衝動的な面もありましたが、エゴは現実に即して衝動をコントロールする役割を担う「現実原則」です。

さらに、スーパーエゴ(超自我)からの要求も調整することになります。いわば、中間管理職の役回りをするポジションと言えます。局所論でいうところの「無意識」の領域だけでなく、必要に応じて意識できる「前意識」や「意識」の領域にあります。

スーパーエゴ(超自我)

親のしつけや価値観、社会規範などを内面化した領域で「道徳原則」を司ります。

「〜しないといけない、するべきだ」というような、いわゆる「べき思考」の源になるのです。これまでの流れからスーパーエゴは意識の領域にあるかと思った方もいるかもしれませんが、実はスーパーエゴの多くは無意識の領域に存在します(前意識や意識には一部存在)。

構造論におけるイド、エゴ、スーパーエゴは相互に影響しあっていて、この影響のバランスが崩れた時に、こころが不調に陥るのだとフロイトは考えました。

確かに、快楽のままに現実を無視して行動しては社会のなかで孤立してしまいますし、「べき思考」が強すぎると、生きるのが窮屈になってしまうことは納得ができますね。

パーソナリティ構造と、フロイトの貢献

ちなみに、「局所論」と「構造論」の2つの心の構造論は「パーソナリティ構造」や「心的装置」としてフロイトによりモデル化されています。

「パーソナリティ構造と、フロイトの貢献」の解説・学習補助画像

フロイトが無意識の重要性を主張するまでは、人の行動はすべて「意識が理性的に決めている」という考えが主流でした。そんな中、人の行動や感情の大部分は無意識が影響している、という考えは非常に画期的だったと言えるでしょう。

問題

  1. 精神分析とはなにか、簡単に説明してください。

    精神分析とは、S.フロイトによって創始された、無意識に抑圧された心的なものを意識化するアプローチです。
    無意識の中に抑圧された心的外傷体験(過去の不快な記憶など)が適切に処理されないことからヒステリーが生じると考え、それを意識化することで治療を試みました。

  2. 局所論とは、どのようなものですか。

    局所論は、心を「意識」「前意識」「無意識」の3層に分ける初期の心の構造論です。
    意識は自覚できる領域、前意識は思い出そうとすれば意識できる領域、無意識は意識できないが行動や感情に大きく影響する領域で、外傷体験などが抑圧されると考えられました。

  3. 構造論とは、どのようなものですか。

    構造論は、心を「イド(エス)」「エゴ(自我)」「スーパーエゴ(超自我)」の3つの構造に分けるフロイトの後期の理論です。
    イドは無意識の領域で快楽原則に従う本能的衝動、エゴは現実原則に基づきイドと超自我を調整する自我、スーパーエゴは道徳原則を司る内面化された社会規範を表します。

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臨床心理学概論

#精神分析#臨床の原理

記事:福永亮佑

更新日:2025-07-18

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  • 精神分析

    フロイトが創始した、「無意識」の解明を目指す心理療法・理論。夢判断や自由連想法などを用い、無意識に抑圧された心の葛藤を意識化することで、精神症状の理解と解決を図る。

  • 抑圧

    「意識」から不快な経験を排除しようとする「無意識」の心的な働きで、自我の基本的な防衛機制。

  • 外傷体験

    心的外傷(トラウマ)となりうる体験。恐怖や不安、恥じらいや身体的な痛みなど。

  • 心的決定論

    精神的な現象は偶然ではなく、必ず何らかの原因(動機)があって生じるという考え。

  • 局所論

    心を「意識」「前意識」「無意識」の3つの層に分けて考える。意識は自覚できる領域、前意識は思い出せる領域、無意識は行動や感情に影響するが意識できない領域とされる。

  • 構造論

    心をイド(エス)、エゴ(自我)、スーパーエゴ(超自我)の3つの構造に分けて考える。イドは本能、エゴは現実適応、スーパーエゴは道徳を司り、これらが相互に作用してパーソナリティを形成するとされる。

  • リビドー

    欲求や快感など、心的エネルギーの源泉。元々は性的欲望に由来するエネルギーとされ、イド(エス)から供給され、人間の行動や思考の動機付けとなる。

  • 生物・心理・社会モデル

    カルテや医師からの医学的所見(生物)、面接や行動観察、心理検査から得るパーソナリティ情報(心理)、家庭や職場などの環境情報(社会)からクライエントを包括的に理解しようとする考え方。