✔ 学習ポイント
遊戯療法は、言語化が難しい子どもが遊びを通じて心理的な課題を解決し、心の健康を育む非言語的アプローチです。
セラピストは、安全なプレイルームで子どもに寄り添い、カタルシス効果による自己治癒力を引き出します。「アクスラインの8つの原則」に基づいた対応が重要で、受容的な態度と共に、安全を確保するための適切な制限を設けることが不可欠です。
遊戯療法とは、どのようなアプローチで、主にどのような対象に行われるものか説明してください。
遊戯療法とは、言語化が未熟な子どもが遊びを通して内的な世界を表現し、心理的な課題を解決する非言語的アプローチです。主に、小学生以下の子どもや発達に課題を抱える子どもが対象となります。
アクスラインの8つの原則に基づき、子どもをあるがままに受容し、許容的な雰囲気を作ります。子どもは安心して自己表現ができるようになり、内的な世界の表現を通してカタルシス効果を得ることで、自身の問題を解決する力である自己治癒力を引き出すことが可能になります。遊戯療法において、アクスラインの8つの原則にある「必要な制限」を設けることの意義について説明してください。
「必要な制限」はクライエントとセラピストの心身の安全を確保し、遊びを治療と成長に結びつけるために不可欠です。例えば、「物を壊さない」「人を傷つけない」といったルールは、子どもに現実とのつながりを意識させ、安心して自己表現できる場を提供します。
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遊戯療法とは
遊戯療法とは、心理療法の一つで、遊ぶことを通じて心理的な課題の解決や心の健康の保持増進を目指す非言語的なアプローチのことです。遊戯療法は、プレイセラピーと呼ばれることもあります。
主に、言語化能力や抽象的な思考能力が未熟な、小学生以下の子どもが遊戯療法の対象となります。発達に課題のある子や、自閉症スペクトラム症の子、知能面でハンディキャップを抱える子、情緒障害を抱える子に対してもよく用いられます。
言語を用いたカウンセリングでは、クライエントがセラピストに対して自由に語り自分の内的な世界を表現することで、今まで見えていなかった自分自身の心に気が付いていきます。一方、言語能力が未熟な子どもに対しては、言葉の代わりに遊びを通すことで、内的な世界を表現してもらおうとしています。

遊戯療法の枠組み
遊戯療法を行う場として、プレイルームが用意されます。
プレイルームには、静かに遊べるボードゲームや、おままごとのセット、人形やぬいぐるみから、体を動かすボールやトランポリンなど、様々なおもちゃが取り揃えられます。また、箱庭療法で用いる箱庭セットが設置されていることも多いですね。
遊戯療法の実施環境
遊戯療法は標準的には週に1回1時間程度、同じプレイルームで同じセラピストと共に行われます。また、壊れたおもちゃは随時、回収・修理・補充されます。いつも同じ環境であるということに、安心感を醸成する効果があるのです。
こうして子どもは、プレイルームでセラピストと、受容的な雰囲気の中で安心して自由に遊ぶことができます。

カタルシス効果
子どもは、セラピストと共に安心できる時間を過ごしていくことで、ありのままの自己表現が可能となります。そして、内的な世界の表現には、「カタルシス効果」と呼ばれる、心を楽にする効果があります。
子どもは、自己表現を通して得られるカタルシス効果によって、自分自身で問題を解決する力である「自己治癒力」を発現させるきっかけを得ることが可能です。こうした一連のプロセスが、子どもの抱える問題の解決へと繋がっていきます。

ちなみに、カタルシス効果は精神分析の概念です。精神分析では自由連想法などの手法、つまりは言葉を用いた内的な世界の表現によって、無意識に抑圧された心的外傷体験を意識化して治療をしようと試みます。
遊戯療法を支える理論と実践:アクスラインの8つの原則
さて、実際に遊戯療法を実施するにあたり、セラピストの振る舞いについて考えてみましょう。遊戯療法においてセラピストは、ただ子どもと一緒に遊ぶだけでよいのでしょうか。
確かに、セラピーの最中は理論を頭の片隅に置いておき、子どもと遊びに没入していくことも必要です。しかし、それはセラピストが考えなしに子どもと遊ぶことを認めるわけではありません。
心理の専門職として、理論なき実践は認められません。公認心理師や臨床心理士は、心理学の知識と技能を持って業務を行うことが求められているためです。これは、公認心理師法第2条、または、臨床心理士資格審査規程第4章の第11 条にそれぞれ示されています。
遊戯療法に対しては、「子ども中心遊戯療法」や「精神分析」「ユング心理学」「認知行動療法」「応用行動分析」など、様々な立場の理論があります。セラピストはいずれかの立場を軸としつつも、子どもに応じて最適な理論を選択して遊戯療法を実施していくことが求められます。
しかし、これらの立場を超えて、広く受け入れられているセラピストの態度や行動の基本的原則があります。それがアクスラインの提唱した8つの原則です。
アクスラインの8つの原則
- よい治療関係(ラポール)を成立させる
- あるがままの受容を行う
- 許容的雰囲気をつくる
- 適切な情緒的反射を行う
- 子どもに自信と責任をもたせる
- 非指示的態度をとり、治療者は子どもの後に従う
- 変化は長い時間を必要とするため、進行を急がない
- 必要な制限を与える
遊戯療法における制限の意義
8つの原則の最後に「必要な制限を与える」があります。他の原則では「あるがままの受容を行う」や「許容的雰囲気を作る」と言っているのに、制限を与えるのは矛盾していると感じるかも知れません。
実際、制限は子どもを委縮させてしまうので、与えるべきではないという考えもあります。ではなぜ、アクスラインは制限を原則に加えたのでしょうか。
アクスライン自身は制限の必要性について「治療が現実に根を下ろし、子どもにその関係における自分の責任を気づかせる」ためだと述べています(アクスライン, Play therapy-The inner dynamics of childhood)。つまり、遊びを治療と成長に結びつけるために制限が必要だという主張です。
また、クライエントとセラピストの心身の安全と健康を守るために設定されるのだという考えもあるのです。
実際の場面で与えられる制限として、「物は壊さない」「人を傷つけない」というルールがよくあります。
例えば、遊びの最中に物を壊した場合、壊した子どもは怪我をする可能性がありますし、壊してしまったという罪悪感を抱くかも知れません。また、人や自身を傷つけた場合には、痛みや罪悪感によって遊びに没頭できなくなるかも知れません。

遊戯療法で行われるのは「遊び」なのです。クライエントとセラピストが共に安心し、楽しめてこそ、遊びが成立し自己表現が可能となるのです。
遊戯療法を行うにあたってセラピストは、こうした背景まで踏まえて「アクスラインの8つの原則」に示された基本的な態度と行動を理解し、効果的な治療に繋げていくことが求められるでしょう。
問題
遊戯療法とは、どのようなアプローチで、主にどのような対象に行われるものか説明してください。
遊戯療法とは、言語化が未熟な子どもが遊びを通して内的な世界を表現し、心理的な課題を解決する非言語的アプローチです。主に、小学生以下の子どもや発達に課題を抱える子どもが対象となります。
アクスラインの8つの原則に基づき、子どもをあるがままに受容し、許容的な雰囲気を作ります。子どもは安心して自己表現ができるようになり、内的な世界の表現を通してカタルシス効果を得ることで、自身の問題を解決する力である自己治癒力を引き出すことが可能になります。遊戯療法において、アクスラインの8つの原則にある「必要な制限」を設けることの意義について説明してください。
「必要な制限」はクライエントとセラピストの心身の安全を確保し、遊びを治療と成長に結びつけるために不可欠です。例えば、「物を壊さない」「人を傷つけない」といったルールは、子どもに現実とのつながりを意識させ、安心して自己表現できる場を提供します。
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