✔ 学習ポイント
認知行動理論は、行動療法と認知療法の基礎となる理論の総称です。
行動療法は、古典的条件づけやオペラント条件づけ、社会的学習などの学習理論に基づき行動変容を目指します。
認知療法は、「特定の状況に対する結果は、状況そのものではなく、状況への認知(捉え方)が影響している」と考え、物事の捉え方や考え方を変えることで治療を目指します。
古典的条件づけとオペラント条件づけについて、簡単に説明してください。
古典的条件づけは、生得的な反応(無条件反応)を、無関係な刺激(中性刺激)と結びつける学習(S:S随伴性)です。
オペラント条件づけは、自発的な行動(オペラント行動)の直後に快・不快の刺激を与えることで、その行動の生起頻度を変化させる学習(R:S随伴性)です。社会的学習による行動は継続して生じるか、理由も含めて説明してください。
社会的学習による行動の獲得は可能ですが、継続して行動が生じる基盤とはなりません。
観察による代理強化は行動の動機となるに過ぎず、その行動を維持・増加させるためには、行動した本人自身が強化子を受け取るというオペラント条件づけのプロセスが必要なためです。認知のABC理論について、簡単に説明してください。
認知のABC理論とは、感情的な不適応(C:emotional consequence)を生み出すのは出来事(A:activating event)ではなく、その人の信念体系(B:belief system)であると考えた理論です。
論理療法の創始者であるエリスにより提唱され、セラピストと患者との討論(D:dispute)を通じて、治療の効果(E:effect)を得るため、後に認知のABCDE理論と呼ばれるようになります。
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認知行動理論とは
認知行動理論とは、認知行動療法の基礎となる考え方のことで、行動療法と認知療法の基礎となる理論の総称です。
行動療法では、古典的条件づけやオペラント条件づけ、社会的学習といった学習理論を基礎とし、行動変容を重視します。
また、認知療法では、認知理論を基礎とし、認知的要因を扱うことを重視します。

今回はそれぞれの代表的な理論の概要について確認していきましょう。
行動療法の基礎となる学習理論
学習理論は、行動療法の基礎となる理論です。行動療法では、学習理論に基づいて行動の修正を行います。
代表的な学習理論として、古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)、オペラント条件づけ(道具的条件づけ)、社会的学習があります。
古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)
古典的条件づけとは、生得的な反応(無条件反応)と、それとは無関係な刺激(中性刺激)を結びつける学習のことです。また、古典的条件づけは、レスポンデント条件づけとも呼ばれています。
古典的条件づけとパブロフの犬
古典的条件づけの有名な例として、「パブロフの犬」という言葉を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか?
生理学者のパブロフは、犬に餌を与える前にベルを鳴らすようにすると、餌が無くてもベルを鳴らしただけで唾液が分泌されることを発見しました。
犬にとって餌は、生得的に唾液分泌を促す刺激です。このような生得的な反応を引き起こす刺激を「無条件刺激」と呼びます。また、唾液の分泌は、無条件刺激である餌によって誘発されるため、「無条件反応」と呼ばれます。
餌とベルの音を同時に提示し続けると、犬は無条件反応である唾液分泌と、ベルの音を紐づけて学習します。その結果、犬はベルの音を聞くだけでも、唾液を分泌するようになります。このような後天的に学習された反応を「条件反応」と呼び、また、その反応を引き起こす刺激を「条件刺激」と呼びます。

「パブロフの犬」の例からは、条件刺激(ベルの音)と条件反応(唾液分泌)の間に、もともとは存在しなかった結びつきが形成されることが分かると分かります。
古典的条件づけと不適応的な行動の関係
古典的条件づけによる学習は、刺激に対する事前準備ができる点でメリットがあります。しかし一方で、条件刺激が不適応的な行動と結びついて学習されることがあります。
例えば、「人前に立つとパニックになってしまう」という症状は、過去に「人前で失敗してパニックになった」という経験が影響している可能性が考えられます。「人前に立つ」という行為がトリガー(条件刺激)となり、失敗に先立ってパニック(条件反応)が生じてしまうのです。
古典的条件づけを利用した治療
古典的条件づけに基づいた行動療法では、このような不適応的な行動と、条件刺激との誤った結び付きをなくすことで治療していきます。具体的な手法としては、系統的脱感作法やエクスポージャー法が挙げられます。
オペラント条件づけ(道具的条件づけ)
オペラント条件づけとは、特定の行動の直後に快・不快の刺激を与えることで、その行動の生起頻度を変化させる学習のことです。また、オペラント条件づけは、道具的条件づけとも呼ばれています。
唾液が出る、というような反射的な反応に対して、人間を含めた動物が自発的にとる行動のことを、オペラント行動といいます。オペラント条件づけでは、ある行動と、それに続いて起こることとの関係性に着目します。
オペラント条件づけによる学習プロセス
例えば、子どもが挨拶をしたとき、その行動を母親に褒められたとします。すると子どもは、「挨拶」が母親に褒められる行動であることを学習します。子どもは次第に、母親に褒めてもらうため、「挨拶」という行動を繰り返すようになります。

上記の例における「挨拶」という行動は、人間の生得的な反応ではありません。しかし、偶然生じたその行動に対して、強化する刺激を随時与えることで学習が成立します。
このように、オペラント条件づけは、学習の内容を自由に変更できる点が大きな特徴と言えるでしょう。オペラント条件づけは、「刺激(例:褒め行動)」が「反応(例:挨拶)」に随伴される点(R:S随伴性)で、古典的条件づけと根本的に異なっています。
古典的条件づけでは「刺激(例:無条件刺激である餌)」に対して「刺激(例:中性刺激であるベルの音)」が随伴されます(S:S随伴性)。つまり、古典的条件づけでは、無条件刺激から生じる反応の範囲でしか学習が成立しないのです。
オペラント条件づけが望まぬ方向に働く
オペラント条件づけによる学習は、自らの行動によって、望ましい結果を得られる点でメリットがあります。しかし一方で、個人による行動や望ましい結果が、適応的な行動や社会的に望ましい結果とは限らない点に注意が必要です。

例えば、「人の関心を惹く」という望ましい結果を得るために、大声を出したり、騒ぎを起こしたりする場合です。このような場合、周囲の人間はそれらの行動に対して否定的な態度を取るはずです。
通常であれば、周囲の人間から注意や叱責をされると、その原因となる行動は生じづらくなります。しかし、この場合においては、「注意」や「叱責」という行為自体が「人の関心を惹く」ことの成功を意味し、原因となる行動が結果的に強化されます。
そのため、オペラント条件づけにおいては、望ましい行動に強化子を与えることも重要ですが、望ましくない行動には何も反応を示さないことも重要になります。
オペラント条件づけを利用した治療
オペラント条件づけに基づいた行動療法では、適切な行動が生じたときに、その行動の強化子を与えること、あるいは、不適切な行動が生じたときに、その行動の強化子を与えない(消去)ことで治療を行っていきます。具体的な技法としては、トークン・エコノミー法やシェイピングが挙げられます。
ちなみに、オペラント条件づけに基づいて、自発的な行動の変容を試みる方法を応用行動分析といいます。
社会的学習
社会的学習とは、個人の直接経験による学習だけでなく、他者の行動の観察によっても学習することを示した概念のことです。
社会的学習において重要になるのが「代理強化」という概念です。
代理強化とは、学習する本人が直接経験するのではなく、モデルとなる人物が手本を示して、それを観察させることにより、望ましい行動を形成することです。
社会的学習のプロセス
例えば、モデルとなる子どもが親切な行動をして褒められるのを、別の子ども(A君)が見ていたとします。すると、A君自体は褒められていませんが、親切な行動が褒められる行動であると学習します。その結果、直接的な強化を受けていないA君であっても、褒められるために親切な行動を取るようになります。

ただし、社会的学習によって形成された行動の頻度を維持・増加するためには、直接的な強化が不可欠です。
A君はあくまでも、親切な行動を取ったモデルが「褒められる」という強化子を得ているのを見て、自分も強化子を得るために行動を起こすわけです。もしA君が親切な行動をしたのにも関わらず、誰にも褒めてもらえないと、その行動を行う理由がなくなってしまいます。
このように、社会的学習はあくまでも行動を形成する動機となるだけで、その行動の維持にはオペラント条件づけによる直接的な強化が必要となるのです。
また、実際の場面だけでなく、テレビや絵本で見た行動をそのまま真似することも、社会的学習による影響といえます。
社会的学習と強化子
社会的学習は、オペラント条件づけと同じく、学習の内容を自由に変更することができます。オペラント条件づけでは、行動を取った本人に強化子を与えることが重要でしたが、社会的学習の段階では、本人への強化子が存在しない点が異なります。
社会的学習に基づいた行動療法としては、モデリング療法が挙げられます。
認知療法の基礎となる認知理論
認知理論は、認知療法の基礎となる理論です。認知療法では、認知理論に基づき、出来事に対する捉え方や考え方を変えることで精神的な症状を治療します。
認知理論の基本的な考え方は「特定の状況に対する結果は、状況そのものではなく、状況への認知(捉え方)が影響している」とするものです。この考え方に基づき、抑うつの認知理論や認知のゆがみ理論など、さまざまな認知モデルが提唱されています。
認知理論を理解しやすい代表的なモデルとして、認知のABC理論を見ていきましょう。
認知のABC理論
認知のABC理論とは、感情的な不適応(C:emotional consequence)を生み出すのは出来事(A:activating event)ではなく、その人の信念体系(B:belief system)であると考えた理論です。認知のABC理論は、論理療法の創始者であるエリスによって提唱されました(そのため、厳密には認知療法の理論とは異なります)。
感情的な不適応が生じたとき、それはある出来事のせいだと考えがちです。しかし、出来事そのものよりも、出来事をその人がどう捉えるかが、感情的・精神的な問題の解決において重要となります。

認知のABC理論で問題を捉える
例えば、Aさんは「私は全ての人から愛されるべきである」という(不合理な)信念を持っています。Aさんが友人に久しぶりに連絡をしたところ、なかなか返信が返ってきません。この場合、Aさんはどのような考え方をする可能性があるでしょうか。
もし、「全ての人から愛されるべきなのに、友人から返信が貰えないとはなんたる不幸だ」と誤った拡大解釈をしてしまうと、ネガティブな感情が生じてしまいます。
しかし、その考え自体には何も根拠がなく非論理的です。この状況を回避するためには、「私は全ての人から愛されるべきである」不合理な信念を再考し、適切な信念に修正することが必要です。
例えば、「私はすべての人から愛されるべきである」という不合理な信念を「全ての人に好かれて生きていくのは難しい」に変化させていくことで、適応的な認知ができるようになります。
エリスは、不合理な信念を適応的な認知へ修正していく治療を論理療法として提唱しました。論理療法において、患者はセラピストとの討論を通じて、自分の中にある不合理な信念に気づきます。そして、その信念を合理的なものへと変化させていくことで、問題を解消しようとします。
認知のABCDE理論への発展
ちなみに認知のABC理論は、セラピストと患者との討論(D:dispute)を通じて、治療の効果(E:effect)を得るため、後に認知のABCDE理論と呼ばれるようになります。A・B・Cの部分では問題の原因を示すのみでしたが、D・Eが追加されたことで、解決策までを含めた理論と考えることができます。
2つの理論を基盤に認知行動療法を行う
認知行動療法の基盤となる理論である、学習理論と認知理論について理解できたでしょうか。
認知行動療法については、認知行動療法の記事で解説しています。理論が実際にどのように利用されるのか、併せてご確認ください。
問題
古典的条件づけとオペラント条件づけについて、簡単に説明してください。
古典的条件づけは、生得的な反応(無条件反応)を、無関係な刺激(中性刺激)と結びつける学習(S:S随伴性)です。
オペラント条件づけは、自発的な行動(オペラント行動)の直後に快・不快の刺激を与えることで、その行動の生起頻度を変化させる学習(R:S随伴性)です。社会的学習による行動は継続して生じるか、理由も含めて説明してください。
社会的学習による行動の獲得は可能ですが、継続して行動が生じる基盤とはなりません。
観察による代理強化は行動の動機となるに過ぎず、その行動を維持・増加させるためには、行動した本人自身が強化子を受け取るというオペラント条件づけのプロセスが必要なためです。認知のABC理論について、簡単に説明してください。
認知のABC理論とは、感情的な不適応(C:emotional consequence)を生み出すのは出来事(A:activating event)ではなく、その人の信念体系(B:belief system)であると考えた理論です。
論理療法の創始者であるエリスにより提唱され、セラピストと患者との討論(D:dispute)を通じて、治療の効果(E:effect)を得るため、後に認知のABCDE理論と呼ばれるようになります。
クリック/タップで解答表示
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